クロス取引(つなぎ売り)のリスクとは?

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クロス取引(つなぎ売り)のコスト

現物買いと信用売りを組み合わせると、株価下落のリスクを回避することで株主優待を獲得する上での損益のリスクを最小化することができます。しかしながら、そのリスクはゼロではありません。このページでは、そのリスクの元となるクロス取引(つなぎ売り)にかかるコストを確認していきます。

「買い」にかかるコスト

「買い」にかかるコストは、下記のいずれかとなります

「買い」にかかるコスト
「買い」にかかるコスト
  • 現物買い手数料
  • 信用買い手数料+買方金利+現引手数料

 

現物買い手数料

一般的に、取引金額や回数で手数料が決まります。証券会社で2つのプランを用意していることが多く、自分の手数料プランが1注文の約定代金に対して手数料を支払うのか、1日の約定代金合計額に対して手数料を支払うのか確認しておく必要があります。クロス取引(つなぎ売り)をどのくらいの規模で行うかによってどちらのプランが有利か異なるので、あらかじめ利用している証券会社の手数料を把握しておくと良いと思います。

 

信用買い手数料

基本的な考え方は現物買い手数料と同じですが、現物取引と信用取引で手数料が異なるのが一般的です。信用買いでは株主優待の権利を得ることができません。しかしながら、信用買いをしてから「現引」して現物株を保有した方が、直接現物買いするよりも手数料が安くなることがあります。「現引」とは信用買いした株式を現物株として受取ることで、信用買いした株式を売却して決済するのではなく、信用取引で買い付けた時の約定価額に相当する額と諸経費を証券会社に支払って返済します。つまり、株の保有状況としては「現物買い」=「信用買い」+「現引」となり、異なるのは手数料だけということになります。

 

買方金利

クロス取引(つなぎ売り)のための信用買いでは、すぐに現引きを行って株を現物保有することになります。しかしながら、その場合でも1日分の買方金利を支払う必要があります。一般的に金利は年利で示されるため、日利を計算するには以下の数式を用います。

日利[%]=(年利[%] +1)^(1/365)-1

 

現引手数料

信用買いした株式を売却せずに現物株として受取ることを「現引」といいます。現引には手数料がかからない証券会社が多いです。SBI証券と楽天証券では現引手数料がかかりません。このため、現物買いと信用買いのどちらが手数料が安いのかは、「現物買い手数料」と「信用買い手数料+1日分の買方金利」を比べればよいということになります。

「売り」にかかるコスト

「売り」にかかるコストは、下記のいずれかとなります

「売り」にかかるコスト
「売り」にかかるコスト
  • 信用売り(売建)手数料+売方金利+貸株料率(一般信用)
  • 信用売り(売建)手数料+売方金利+貸株料率(制度信用)+逆日歩

 

信用売り(売建)手数料

信用買い手数料と同じで、一般的に、取引金額や回数で手数料が決まります。「現物買い」を「信用買い+現引き」で代替するような方法は信用売りにはないため、素直に支払う必要がある手数料となります。

 

売方金利

一般的に証券会社で設定されていないか、ゼロとなっています。しかしながら、信用売りでは取引手数料以外のコストがゼロというわけではありません。信用売りでは証券会社からお金を借りて取引するのではなく、株を借りることになるので後述の貸株料率がかかることになります。

 

貸株料率

貸株料率は、一般的に「一般信用取引」を使うのか「制度信用取引」を使うのかで金利が異なり、「一般信用取引」の金利は「制度信用取引」の金利よりも高くなります。年利から日利を計算するには買方金利同様に以下の数式を用います。

日利[%]=(年利[%] +1)^(1/365)-1

「一般信用取引」と「制度信用取引」の違いは、取引できる銘柄を証券会社が選んでいるか証券取引所が選んでいるかから生じます。具体的な違いはいろいろありますが、クロス取引(つなぎ売り)を行う上では、取引できる銘柄の数や在庫と、逆日歩の有無に違いがあると思えばよいかと思います。

「一般信用取引」と「制度信用取引」の違い
「一般信用取引」と「制度信用取引」の違い

一般信用取引では取引できる銘柄の数が少なく、月によっては魅力的な銘柄がなくほとんど取引できないこともあります。また、魅力的な銘柄があったとしても、他の投資家に先に信用売りをされて証券会社が有する在庫がなくなってしまうと信用売りをできなくなってしまいます。一方、一般信用取引では後述の逆日歩が一切かからないため、取引前にコストを精度良く試算することが可能であり、予測不可能な不確実なリスクが少ないという大きなメリットがあります。

なお、最大でも1日しかかからない買方金利と異なり、一般信用取引の場合では証券会社の在庫がなくなる前に信用売りをしておく必要があることもあり、売方金利日数は比較的大きくなります

金利日数は受渡日ベースで計算される
金利日数は受渡日ベースで計算される

また、金利日数は受渡日ベースで計算され、約定日ベースでは計算されないという点も注意が必要です。例えば火曜日が権利付最終日で現物買いと信用売りを約定したとして、翌日である水曜日の権利落ち日に現渡決済したとします。この場合、金利日数は2日とはなりません。それぞれの受渡日は約定日の3営業日後(2019年7月16日(火)以降は2営業日後)となるため、現物買いと信用売り分の受渡日は金曜日で、現渡決済の受渡日は翌週月曜日と週をまたがることになり、金利日数は4日となります。GWや年末年始をはさむ4月や12月は特に金利コストが大きくなるため注意する必要があります。

 

逆日歩

信用売りは証券会社から株を借りる取引となるので、貸株料と呼ばれる借りるためのコストがかかると説明しました。しかしながら、「制度信用取引」では貸株料以外にも株を借りるコストがかかることがあります。信用売りによって証券会社は株を貸す必要がありますが、証券会社は株や資金を調達する会社である証券金融会社から株の調達を行います。貸し出せる株がなくなってしまうほど信用売りが多くなると、証券金融会社で貸し出す株が不足してしまいます。そうすると、証券金融会社は別の証券会社や機関投資家から料金を払って株を調達することになります。

株の調達費用は、逆日歩として投資家に請求される
株の調達費用は、逆日歩として投資家に請求される

この時に上乗せで発生した費用は、最終的には信用売りをした投資家が請求されてしまいます。これが「逆日歩」です。銘柄によっては多額の逆日歩が発生することがありますので十分な注意が必要です。逆日歩の怖いところは、逆日歩をある程度は予測することができても、取引が終わってみないと実際にどれほどになるのか確定しないことです。外食やカタログギフトなど人気がある株主優待では、結果的に逆日歩のせいで株主優待の価値の2倍や3倍のコストがかかってしまったという例もしばしば見受けられます。

一般信用取引と制度信用取引の違いは、1つ前の項目の貸株料率のところで紹介しました。不確実性を避けるために取引可能銘柄が少なかろうが金利が高かろうが、逆日歩がかからない「一般信用取引」を使うのか、機会損失や金利コストを避けるために「制度信用取引」を使うのか、あるいは両方を併用するのかは個人の好みと最終判断によるかと思います。

その他のコスト

配当金と配当落ち調整金の差額

権利付最終日に株を現物保有していると配当金を受け取ることができますが、税金が源泉徴収されますので実際に受け取る配当金は配当金総額の約80となります。一方で、信用売りしている株については「配当落ち調整金」として配当金総額の100%分を証券会社に支払うことになります。つまり、差し引き配当金総額の約20%の差額を負担することになっていまいます。

配当落ち調整金は損益通算される
配当落ち調整金は損益通算される

ただし、特定口座を利用していて、源泉徴収ありで配当金を株式比例配分方式で自動受取している場合、配当落ち調整金は特定口座内で譲渡損として自動的に損益通算されますので、現物保有で受け取った配当金から控除されたしまった税金支払い分は最終的には証券会社から還付されます。数式で表すと、以下の通りとなります。

受け取る配当金(配当金総額の約80%)+還付金=配当落ち調整金(配当総額100%)

よって、配当金と配当落ち調整金の差額は基本的には気にする必要がないということになります。なお、特定口座を利用していなかったり、源泉徴収をなしにしていたりする場合には、還付金を得るために確定申告が必要となります。

 

現渡の手数料

信用売りによって証券会社から借りた株式を市場から買い戻すのではなく、現物保有している同じ株数の同じ銘柄で返済することを「現渡」といいます。クロス取引(つなぎ売り)では権利落ち日に現渡による決済を行い、現物買いと信用売りを証券会社の口座内で相殺して手仕舞いします。

多くの証券会社で現渡の手数料はゼロとなっています。SBI証券と楽天証券では現引手数料がかかりません。

 

以上で、クロス取引(つなぎ売り)のコストを確認することができました。あとは実践するだけかと思います。次のページが最後となりますが、クロス取引(つなぎ売り)を実行するための株主優待価値とコストの考え方、クロス取引(つなぎ売り)を実践するための情報のリンクを確認します。

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Posted by ぱる